Episode9:一夜の中に潜む緊張感──送迎ドライバーが見た、街の裏ルートと危険信号。
夜の街は静けさと喧騒が入り混じる。
走り慣れたはずの裏道を進むときでも、ふと背筋が冷たくなる瞬間がある。
ドライバーとして積み重ねてきた経験が、無言で「危険」を知らせるのだ。
🅿️ 袋小路での立ち回り
ホテル街には袋小路が多く、先に送迎車が並んでいることも珍しくない。
そんなときは無理に突っ込まず、近くのコインパーキングにサッと入れる。
だいたい3分以内なら課金されないので、嬢をホテル前まで案内してすぐ戻るのが定番だった。
車を停めるのも時間との戦い──そんな小技の積み重ねで夜を乗り切った。
🗺️ 上野駅から鶯谷北口への抜け道
上野駅から鶯谷駅の北口へ向かうとき、大通りを通れば夜でも渋滞がひどい。
だからいつも上野の森美術館前の細い道を抜け、東京国立博物館前を通り、南口の坂を下りて北口へ入るルートが暗黙のセオリーだった。
今では博物館周辺の道路はパイロンで路駐できないが、当時は観光ビザで働きに来ていた韓国人ドライバーたちが、まるで駐車場のように並んで待機していた。
車の中でタバコをふかす同業者と無言で目が合い、互いの存在を確認する──そんな夜の社交場でもあった。
⚠️ 危険信号の察知
尾竹橋通りのいなげや裏には、夜になると韓国人ドライバーの送迎車が何十台も並ぶ光景があった。
そんな異様な光景はすぐに通報され、パトカーが巡回に来て注意を受けることも多かった。
尾久橋通りでも、深夜にパーキングメーター以外の場所へ停めていれば、警察は無言で車に横付けし、車内を確認する。
一番嫌な思いをしたのは、22時頃パーキングメーターの枠内で待機していた時のこと。
突然カメラのフラッシュが光り、フロントナンバーと自分の顔を撮影された。
すぐに窓を叩かれ、罵声を浴びせられた。違法駐車ではないのに、怒りで思わず「画像を消せ!」と食ってかかった。
ちょうど通りがかったパトカーが仲裁に入り、その場で画像を削除させたが、心臓が凍るような瞬間だった。
当時は、送迎車の台数が多くアイドリング音や立ち話が通報の原因となり、韓国人ドライバーの中にはゴミを路上に捨てる者もいて、周囲の視線は冷たかった。
だから俺は常に単独で待機するよう心がけた。
目立たず、静かに仕事をこなすドライバーこそ、実は最も稼いでいた──そんな暗黙の現実があった。
🧭 ベテランドライバーだけが知る走行のコツ
当時はスマホナビが普及し始めたばかりで、アプリの案内はほとんど大通りしか出ない。
細い裏道をどれだけ頭に叩き込んでいるかで、送迎時間は大きく変わった。
韓デリ嬢たちの気性は激しく、移動が遅ければ「次は呼ばない」と言われることもある。
客先に遅れて着けば短いコースに減らされ、ママさんからのクレームも飛んでくる。
だから自然と「早く、スムーズに送る」技術が求められた。
ルートを熟知したベテランドライバーほど仕事は増え、遠方の「美味しい仕事」も回ってくる。
道を知らない新人はすぐに呼ばれなくなる──そんな厳しい序列が夜の街のドライバー業界には確かにあった。
🌙 緊張感の中にある日常
深夜の歓楽街は、危険と隣り合わせの仕事場だった。
笑顔で送り出す裏で、常に次の動きを読み、車を止める場所やタイミングを計算していた。
無事に朝を迎えられることが当たり前ではない──そんな夜を幾度も走り抜けてきた。
夜は誰にでも平等に訪れる。 だがその闇を走り抜ける者にしか見えない景色がある──
次回予告:
Episode10では、さらに厳しくなる取締りの目と、街の“回避動線”がどう変わっていったのかを追います。
※本記事には暴力・違法行為に関する描写が含まれます。体験記録であり、違法行為を助長する意図はありません。登場人物・団体は特定できないよう配慮しています。

