Episode7:交差点の呼吸──グレーゾーンの街とドライバーの日常
鶯谷の街は、昼間からどこか異様だ。学生の登下校の時間帯にも、ホテルのフリータイムを狙った客が路地に消えていく。そのアンバランスな光景は、街全体を薄い膜で包んでいるような不穏さを感じさせた。
そして夜。日が落ちると空気はさらに重くなり、ネオンの光に浮かび上がるのは無言の人影と警察の影。車列は静かに流れ、交差点の信号の点滅が、この街の“呼吸”を刻んでいる。
🚨 裏ルール:警察の目を“かいくぐる”ための基礎知識
- ホテル前は素通り:巡回中の警官やパトカーが視界に入ったら、ホテル前で止まらずスルーして安全な位置で様子を見る。
- スーツ姿のカップル:私服警官の可能性あり。違和感を覚えたら接触を避けて素通り。
- パトカー回避:急ハンドルは厳禁。自然な動きで右左折し別ルートへ。
- 尾久橋通りでの転回:時間外の転回は取締り対象。キャンセルで戻る際に焦ると違反で切符を切られることも多い。
- 韓デリ嬢の在留資格で変わるリスク:結婚ビザなら堂々とホテル前で降ろせるが、大半は観光ビザ。違法リスクを避けるため慎重な動きが求められる。
- 情報は“自己判断”:無線は使用せず携帯電話のみ。現場の警戒はほぼ自己判断で動くしかない。
これらのルールはマニュアル化されていない。紙の地図ではなく街の「呼吸」を覚えないと、夜はすぐに長くなる。
⏱️ 一日の流れ(タイムライン)
- 17:00 出勤の連絡を受付に。尾久橋通りや尾竹橋通りはラッシュで渋滞気味なので、三河島駅方面の裏路地で気分次第の待機。
- 18:00 送迎の電話が入り始める。
- 20:00 駐車場付きセブンイレブンでトイレ休憩。ホットスナックやおにぎりを調達。
- 21:00 品川・五反田・六本木など遠方へ向かう嬢を送迎(泊り予約のため)。
- 22:30 鶯谷北口のメイン→寮→ホテル街を往復。※左回り優先の暗黙ルール
- 23:00 ホテルでの仕事を終えた嬢をピックアップ。帰りは暗黙の順路を守って移動。
- 23:40 待機。街灯の下で携帯が鳴るのを待つ。
- 00:00 鶯谷近辺のホテルに泊まる客が増え始め、嬢を寮からホテルへ送る動きが増える。
- 00:20 巡回の影。警官の動きを察知し、裏路地経由で時間をずらす。
- 01:10 ピックアップ失敗。“ワンコール”が鳴らず、もう一周。
- 02:00 キャバ帰りの客が増加。酔客の動きで道路状況も一変。
- 02:05 職質の気配。交差点手前で切り返して視線を避ける。
- 03:30 コンビニで軽食。ブラック缶コーヒーで眠気を飛ばす。
- 04:00 送迎依頼が減り始める。
- 05:00 泊りで派遣した嬢が遠方なら、その近くで仮眠。コールがあるまで待機。
- 08:00〜10:00 泊り客のホテル前で迎え。昼前には一度仕事が途切れる。
- 21:00頃 朝まで送迎が続いた日は、この時間に再び出勤。生活リズムは完全に夜型。
- 10:00 街が日常に戻り始める時間。夜の緊張感が薄れ、朝の風景が街を塗り替えていく。
⚠️ リスクと回避のミニマム・パターン
- 助手席に座らせる理由:韓デリ嬢は基本的に助手席へ。恋人同士に見せることで職質を避けやすい。
※後部座席に乗っているのは、日本人キャストの可能性が高い。 - 観光ビザ嬢の場合:職質に遭ったら「これから上野に遊びに行く」「食事の帰り」など、時間帯に合わせて会話を作る。
- 結婚ビザ嬢の場合:堂々と「デリヘルの送迎です」と伝えればOK。
日本語が流暢な日本人ドライバーは疑われにくいが、韓国人ドライバーは長時間職質されることも。 - ホテル前の職質が一番危険:出入り時の停車で職質される確率が高い。常に周囲の視線を意識。
- 路駐時も堂々と:「送迎です」とはっきり言う方が早い。
免許証チェックで終わることが多いが、トランクやグローブボックスまで見られる時は時間がかかる。 - “ネタ見せ”で空気を変える:面倒な職質で機嫌が悪くなった時は、
仕事用のローションや電マ、コンドームを出して警官の反応を楽しむことも。 - 車両チェックは必須:出勤前にライト類やナンバー灯を確認。
車体が汚れすぎていると余計に職質対象になりやすいので、洗車も欠かさない。
📝 小さな出来事
コンビニのトイレはよく使わせてもらう。その代わり必ずドリンクやタバコを買うのが暗黙のルールだ。何度も通ううちに店員とも自然と挨拶するようになり、たまに軽い世間話もする。
「この時間、同じ車がぐるぐる回りますね」──レジの店員が窓の外を見ながら笑った。街は全部知っている、知らないふりをしているだけだ。
韓国人ドライバーの中には、買い物もせずトイレだけ借りて出ていく者もいて、店員は少しムッとした表情を見せることもあった。こういう小さな人間関係が、夜の街では意外と重要だ。
🌫️ 余韻
ドライバーは、街の“余白”で生きている。誰も見ない角度で、誰にも気づかれない速度で。
そして今日もまた、交差点の呼吸に合わせて、影は動き出す。
次回予告:
Episode8では、裏社会と行政の見えない接点──店を支える“影の存在”の正体に近づきます。
※本記事には暴力・違法行為に関する描写が含まれます。体験記録であり、違法行為を助長する意図はありません。登場人物・団体は特定できないよう配慮しています。

