裏社会シリーズ

シリーズを読むならここから!体験者だからこそ書けるリアルな物語です。

第1章 Episode1

第1章 Episode2

裏社会シリーズ

夜の鶯谷。尾久橋通り沿いの街灯の下で、無音のまま待機する車列。ライターで煙草に火をつける韓国人ドライバーたち。目が合えば軽く会釈するだけで、余計な会話はない。――この「静寂の待機」が夜の始まりだった。

🧾 出勤前の準備:釣銭をつくる

私

鶯谷に入る前に、まずは両替。

私

近辺のパチンコ店の両替機で1万を1,000円札に30枚、500円玉に20枚

両替して用意する。

私

小銭入れと札は分けて車のグローブボックスへ。細かい精算や立替が入っても、これがあれば仕事が止まらない。

📞 22:30 最初の配車

受付
受付

◯◯寮のアガシ(=韓デリ嬢)を Aホテル まで送って。

私

了解、向かいます。

私

◯◯寮前に到着。アガシへ到着合図でワンコール

アガシ
アガシ

アガシが出てきたら乗せて Aホテル へ移動。

私

Aホテル到着。降車完了。

アガシ
アガシ

アガシはお客様から代金を受け取り、受付に OKコール

受付
受付

OKコールあった。いったん尾久橋通りに戻って待機して。

私

了解、尾久橋通りで待機。

受付
受付

次、Aホテルに迎え。寮へ戻し(または別ホテル)お願いします。

私

了解。

私

Aホテル到着。アガシへ到着合図でワンコール。

アガシ
アガシ

アガシを乗せ、寮へ送るか、指示があれば別のホテルへ送迎。

私

送迎完了。尾久橋通りへ戻って待機。

私

この一連の流れを、夜通しずっと繰り返す。

💴 他店のお手伝いと小遣い

ときどき他店のキャストの送迎を頼まれることがある。そういうときは、距離に応じて500円〜1万円を手渡しで受け取る。財布に直接滑り込むその重みで、「裏の仕事をしている」という実感がじわりと増していく。

🚗 狭いホテル街と“暗黙ルール”

進入は北口メイン道路の駅前「突き当たり」からのみ。そこから左のホテル街/右のホテル街へ入る。メイン道路の途中から各路地へは進入しない――詰まり防止のローカルルールだ。

  • 駅前突き当たり=唯一の入口
  • 左路地/右路地のホテル街へ分岐
  • 大通り側から各路地に直接は入らない

🔰 進入ルール(図解)

鶯谷・北口:進入は駅前の突き当たりからのみ。大通り途中からは進入禁止
進入は駅前の突き当たりからのみ。そこから左/右のホテル街へ。 大通り途中からの進入は禁止(詰まり防止のローカルルール)。

🌍 観光ビザと国際免許の現実

多くの韓国人ドライバーは観光ビザで3か月滞在。右側通行の国から来て左側通行の日本を走るため、逆走や事故も珍しくない。「免許証を出して」――職質で聞くその一言は、毎回、心臓を強く締めつけた。

🤝 言葉の壁と衝突

お客さまの約90%は日本人。残りは中国人・韓国人・欧米人・アジア各国の観光客など多国籍だった。スタッフは韓国人が中心だが、受付担当には日本語が上手い人もいて、電話対応や日本人客とのやり取りを難なくこなしていた。

一方でアガシたちは日本語の単語しか分からないことが多く、現場での会話はほとんど韓国語。ドライバー同士も韓国語でやり取りし、配車順や対応をめぐって揉めることも日常茶飯事。言葉の壁と緊張感は常に付きまとっていた。

🪟 送迎後に残る痕跡

ドアを乱暴に閉められたり、唾を吐かれたり、座席裏にガムを貼られることもある。そんな痕跡を見つけて報告すると、罵声が飛ぶ。「仕事だから仕方ない」と言い聞かせながらも、心は少しずつすり減っていった。

🍜 深夜の買い物・食事も仕事のうち

アガシが「コンビニ寄って」と言えば立ち寄る。韓国食堂でテイクアウトを受け取ることも。そのままホテルへ直行。送迎は単なる移動ではなく、生活の延長線だった。

💵 ドライバーの密かな“ご褒美”

この仕事にも、少しだけ心が躍る瞬間がある。自宅送迎や、鶯谷から離れた23区内・近県ホテルなどの長距離コースが入ったときだ。サービス終了後にお客さまやキャストから1,000円〜20,000円の現金を直接手渡しでもらえることがある。その札を受け取る一瞬は、疲れた夜を報われた気持ちにしてくれる“ご褒美”だった。

🚨 巡回パトカーと“いちばん怖かった夜”

鶯谷ではパトカーの巡回が頻繁で、近隣住民からの通報も多い。ある夜、職質でビザ切れのアガシが見つかり、そのまま強制送還になった。運転席の自分は、ただ黙って見送るしかなかった。

この街で過ごした一晩一晩は、どの瞬間も「非日常」の連続だった。だがそれが“日常”になってしまったことこそ、いちばん恐ろしかったのかもしれない。

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